初心者の「ゴルフの障害を打ち破る」技術 第5回(1〜5回)

初心者の「ゴルフの障害を打ち破る」技術 第5回(1〜5回)

前回の「社交」に引き続き、最終章は「技術」についてです。

前回までに、「ニューゴルファー」にとって、ゴルフを気軽に始められない理由となっている「時間」、「費用」、「社交」の問題を打破するための米国ゴルフプロフェッショナルたちによる取り組みの成功例をご紹介してきましたが、最終章は「技術力の心配」についてご紹介します。

技術力の心配

  • 始めるまでの懸念。
  • 楽しくゴルフができるほどの技術があるかの心配。

ニュージャージー州のあるゴルフ場によれば、ゴルフの技能に心配や懸念があるほど、ゴルフにかける費用に対して謙抑的になると考えています。そこで、このゴルフ場では、低価格による「ブートキャンプ」を導入しつつ、6週間のプログラムによって、ニューゴルファーが、ゴルフの基礎的な技能を修得できるクラスを提供しており、実際にとても人気があるそうです。

このプログラムはもちろん収益にもつながっていますが、それ以上に参加者がゴルフの基本を一緒に学び、楽しく過ごせる仲間を紹介される良い機会と場所にもなっています。一年前に「ブートキャンプ」に参加した人たちがそこで知り合った仲間と一緒にコースに戻ってくるといったケースも生じています。

このことから「ブートキャンプ」は、ゴルフを楽しみ、ゴルフ仲間を作りたいと願う人達に紹介できる素晴らしいプログラムと言えるでしょう。また、「ブートキャンプ」では、時間について柔軟性を持たせ、毎週何曜日の何時と決めずに、ご自身のスケジュールに合わせてクラスを選択できるようにしているそうです。

フロリダ州のあるゴルフ場マーケティングディレクターの言葉を借りれば、ゴルフは大変なスポーツで、地球上で最もフラストレーションの溜まるスポーツです。しかし、1日に1回良いショットが打てれば、その人がまた戻ってくる可能性は高く、その人の持つ伸び幅は無限大と言えるでしょう。そのために、その一人一人のレベルに合った手の届く目標を設定してあげることで、目標に向けて本人のモチベーションも上がり楽しむことができるのです。その人の学習難易度の幅をできる限り狭く設定することが、ニューゴルファーにとって、ゴルフの楽しさが増すコツとなるでしょう。

ニューゴルファーがゴルフを始めるにあたり直面する「技術力の心配」を克服するために、貴方やあなたの職場では何をしていますか?

参考:https://www.thengfq.com/2019/10/breaking-down-barriers-to-golf-participation/?utm_s_medium=Q&utm_campaign=Oct19&ID=1428257

 

特にニューゴルファーにとって仲間の存在とステップバイステップで導いてくれるプロフェッショナルの存在は欠かせないと言えるでしょう。初心者の中には、苦しいゴルフを強いられる一日を過ごすことになるだろうと想像するだけで、ゴルフ場に行くこと自体を尻込みしてしまう人は多いはずです。こうした初心者を、レッスンに対して意欲的にし、ゴルフを通じて仲間ができる喜びに覚醒させ、目標設定を低くしてモチベーションが維持できるように練習する。これをサポートする役割を担うのがゴルフプロフェッショナルであり、ゴルフプロフェッショナルの仕事の醍醐味と言えるのかもしれません。

ゴルフプロフェッショナルがゴルファーを指導する上で、もう一度再確認をしてもらいたいことがあります。それは、NGF指導法の中に出てくる「ティーチング」と「コーチング」の違いについて今一度心に留めておいて欲しいと思います。

「ティーチング」とは、指導テーマに対する定義や概念を明確にし、学習者に対して正しく概念を理解させること。

「コーチング」とは、ゴルフの楽しさを伝え、目標に到達できるように導くこと。

勘違いされやすいのは、「コーチング」と「レッスン」を混同して捉えている人が多いことです。「レッスン」はただの技術指導です。

特にニューゴルファーの場合は、「レッスン」の前にゴルフの楽しさを伝える「コーチング力」がとても大事になってきます。

NGFゴルフ経営言論の「インストラクション」の中で、指導局面におけるティーチング&コーチングの章があります。この中では、ティーチングとコーチングの意味と目的、重要性や方法論などが解説されています。また、初級(入門)・中級・上級それぞれの指導のポイントなど、ボタンの掛け違えが起こらないよう今後の参考にしてみてください。

ゴルフ経営原論/第一部ゴルフビジネス/第三章インストラクション/1.指導局面におけるティーチング&コーチング(https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_1_3-1.html)

 

最後に、計5回に渡って米国NGFによる「ゴルフの障害を打ち破る」について紹介してきました。「ニューゴルファー育成」を目指す活動の中で、ニューゴルファーが、どうすればゴルフを始められ、継続し続けることができるかを一緒に考え、あらゆる方法を検証することが大事かも知れません。昨今の傾向として、かつての場合と異なり、ユーザーであるニューゴルファーの意見がゴルフビジネスの市場を支配する時代です。従来のやり方を押し付けようとしても逆にニューゴルファーを遠ざけてしまう結果になりかねません。そのことからニューゴルファーに最初に出会い、その意見の直接の受け皿となるゴルフプロフェッショナルの重要性をますます感じずにはいられません。時代とともに手法や価値観は変わるかもしれませんが、人間の持つ普遍的な身体や感情に心を向ければ、時代に関係なくちょっとしたアイディアがピタリと当たることがあるかもしれません。

また、これらの活動を続ける中で、今後、さらに力を入れるべきは「クラブライフ」を根付かせる環境づくりが必要と言えます。家族が一緒に過ごす時間を重視し、地元のコミュニティが作る集う場を提供する時代、入場の制度をもっと個人から家族・友人へと枠を広げ、社会的役割をゴルフ場が担う時代が来ることを期待しています。

NGF FAR EAST 代表  宮田 万起子

 

NGF会員用参考資料:ゴルフ経営原論/第一部ゴルフビジネス/第三章インストラクション/1.指導局面におけるティーチング&コーチング(https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_1_3-1.html)