エクスペリエンス時代のコース経済学

 

エクスペリエンス時代とは、物理的な製品やサービスの提供だけでなく、顧客の購入プロセスやユーザーの使用中の体験(エクスペリエンス)を重視する時代を指す概念です。 

米国でも、18ホールをラウンドさせるのみの従来のビジネス方法論に警鐘を鳴らし、時代を見据えることを促しています。1日のラウンド数が少ない状況を見逃してしまえば、そこに付随して発生するレストランや売店などの売上も一緒になって減少します。US-NGFの統計によれば、ラウンド数が増加すれば、それに応じて売上は45%上昇するとされています。

 また、例えば、当日キャンセルによる損失は約9%と分析され、年間約10億ドルの機会損失が発生しています。もっとも、これらのキャンセル理由のうち、コースコンディションによるプレーの断念は、わずか11%です。それ以外は、プレーの要素以外の予約手続やスケジュール調整等の問題が理由となっています。

こうした問題は、予約時にクレジットカード情報の入力を事前に要求したり、リマインダーやウェイティングリストによる対策を講じれば、改善されるとされています。

 こうした対策として昨今のレストランビジネスの戦略も参考になります。OpenTableなどのレストラン予約サイトは、遅刻やキャンセルの影響を軽減させ、スタッフの出勤調整にも役立っているそうです。

 多くのホスピタリティ・ビジネスが、収益を上げる多様な方法を模索している中で、ゴルフ場の多くは、(予約時間>プレー>退場)という流れの中で短絡的に考えており、顧客満足度とビジネスの成長を制限しています。

食事や小売のオペレーションの利便性を向上させたり、地元企業との提携など、新たな収益源を生む機会の創出が求められています。

 多様な収益体制へとシフトしていく上で重要な視点は、ゴルフのオペレーターとしての視点だけではなく、顧客のエクスペリエンスをデザインする視点にあるようです。

  

プレイヤーが「ただゴルフをする」だけでなく、

プレーを通じて得られる感動や満足感、サービスや施設の質、コミュニティとのつながり

といった要素を求めていることは、私たちにとっても日々身近に感じていることではないでしょうか。

企業やゴルフ場は、これらの体験を提供することで、より多くの人々にゴルフの持つ文化や魅力を伝え、

より広い層のユーザーを引きつけることが可能となることでゴルフ業界の活性化につながると考えます。 

ゴルフ経営原論(第二部 ビジネスマネジメント 第三章 タスクマネジメント サービスコントロール)の中でも、

早朝プレー制度、セルフプレー制度、スループレー制度、サンセットプレー制度、

家族ペット同伴制度、変則プレー制度、先行パス制度、食物持参許可など、

自由で多様なプレースタイルが求められています。

大型練習場やコンペより「スクール」、キャディーより「インストラクター」が求められているなど、

目先に捉われた奇抜なアイディアではなく、本来のゴルファーが純粋に求めているものに着眼し、

「新しいゴルフサービスのあり方」を探ることが、ゴルフの伝統を守る上でも重要と言えます。

 

ゴルフ経営原論 第二部 ビジネスマネジメント

第三章 タスクマネジメント

Section 2 サービスコントロール

https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_2_3-2.html

 

NGF FAR EAST

代表 宮田 万起子